読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

テクノロジーの力で「働く」に革新を起こす!──「officeHack Work×IoT」プロジェクトが始動

Lifehack

オフィスや仕事に使うモノを、テクノロジーの力で進化させ、ワークスタイルに新しい価値をもたらそう。リクルートキャリアなどが主催する「オフィス・ハック」プロジェクトが始動した。第一回は「IoT」にフォーカスした討議とピッチコンテスト。いまオフィスの何が課題なのか。それを乗り越える「IoT」サービスとは何なのか──

f:id:carraria:20160317170133j:plain

仕事の道具がネットにつながると、働き方はどう変わる?

9月29日、東京・渋谷のTECH LAB PAAKで開かれた「officeHack Work×IoT」。テーマを「テクノロジーの力で『働く』に革新を起こせ」と題し、パネルセッションとピッチコンテストが行われた。リクルートキャリアと、IoTハードウェアの企画や開発を行うハタプロの共催である。

近年、急速にIoTへの関心が高まっているが、具体的なアプリケーションやプロダクトとしてはもっぱら自動車や家電製品、産業機器などに話題が集中している傾向がある。ただ、ビジネスパーソンが日々接するノート、デスク、ホワイトボードなど、オフィスや仕事に使うモノとIoTの関係も重要ではないのか。オフィスを彩るワーキングツールを、テクノロジーの力で進化させて、世の中の“働く”に新たな価値を創りだそうというのがプロジェクト「officeHack Work×IoT」の狙いだ。

f:id:carraria:20160317170135j:plain

前半のパネルセッションに登壇したのは、リクルートキャリア ネットビジネス推進室 IoTグループ シニアプロデューサーの宮崎雄一朗氏、コクヨ 経営企画室 新規事業開発センターの稲垣敬子氏、TBWA\HAKUHODO\QUANTUMシニアプロジェクトマネージャーの岸田泰幸氏、Qrio(キュリオ)営業企画部マネージャーの佐藤竜斗氏の4名。リクルートキャリア IoTグループの鹿内学 博士が討論のファシリテーターを務めた。

リクルートキャリアは今回のイベントの仕掛け人でもあるが、新しいワークスタイルの創出には以前から関心が高く、最近はITを活かした業務革新についての提案力を高めている。例えば、簡単に名刺交換ができ、名刺交換した日時・場所・メモを残せるアプリなどは具体的なプロダクトの一つ。宮崎氏はそれをさらに進化させるべく、名刺管理とスキャナーを一体化させた名刺ケース「ケースキャン」が開発途上にあることを報告した。

f:id:carraria:20160317170137j:plain▲株式会社リクルートキャリア ネットビジネス推進室 IoTグループ シニアプロデューサー宮崎雄一朗氏

「ケースキャン」の開発には、TBWA\HAKUHODO\QUANTUMもサービスコンセプトの開発からプロトタイプ製作まで一貫して参画している。

岸田氏は「これからはクリエイティビテイ×テクノロジー、大企業×スタートアップなど異なるものを結び付けるオープン・イノベーションが重要なキーワードになる」と語る。

f:id:carraria:20160317170138j:plain▲TBWA\HAKUHODO\QUANTUM シニアプロジェクトマネージャー 岸田泰幸氏

Qrioの佐藤氏は、スマートフォンで鍵の操作をできるようにするデバイス「Qrio Smart Lock」を、オフィスワークとIoTの関係を先取りする具体的なプロダクトとして紹介した。

「スマートロックはコワーキングスペースやシェアオフィスの管理、さらに一般のオフィスでも会議室管理や勤怠管理にも使えるもの。鍵ひとつでも働き方が変わってくる」と述べる。

f:id:carraria:20160317170145j:plain

オフィス製品の老舗コクヨでも、IoTを含むテクノロジーをオフィスにどう活用するかという観点での研究開発が進んでいる。稲垣氏は、テレワークや個人使用のスマホなどを業務にも使うBYODが進む現状を指摘しながら、こう語った。

「これからは一つのオフィスに縛られることなく、どこでもいつでも働けるようになる。オフィスツールもお仕着せのものを利用するのではなく、自分たちが好きなものを選ぶという流れが強まるだろう。オフィス向け商品といっても、会社向けに売るのか、個人向けに売るのかが、今後の重要な分岐点になっていく」

f:id:carraria:20160317170146j:plain

自分たちが作るものが、世の中から必要とされているか

イベントには約60人のビジネスパーソンや学生らが参加。テクノロジーやIoTへの関心が高い人ばかりだが、プロダクトやサービスの開発は単にエンジニアリング的な興味だけでは難しいことも、パネラーからは指摘された。

「米国でスタートアップが失敗した理由のトップは、その製品やサービスが市場から必要とされなかったから。資金や人材不足は最大の理由ではない。何より大切なのは、自分たちがつくるものが世の中から必要とされているのかどうかという関心だ」と述べるのは岸田氏。

宮崎氏も「技術は大切だが、顧客が必要とするものを察知する能力も、同じくらい大切。私たちは潜在顧客ニーズを知るために、ワークスタイルを革新させるプロダクトの提案サイト『カクシン』を活用している」と語る。

f:id:carraria:20160317170143j:plain

ソニーとのジョイントベンチャーQrioに所属する佐藤氏は、「実はソニー社内にも社内プロジェクトを応援するためのクラウドファンディングサイトがあり、現時点で国内の一般的な購入型クラウドファンディングよりも、平均の調達額が大きかったりする。

欲しい人がいるかどうかは、製品開発を促す決定打になる。マーケットニーズを拾うためにクラウドファンディングの活用という手段もある」と提案する。

f:id:carraria:20160317170139j:plain▲Qrio株式会社 営業企画部マネージャー 佐藤竜斗氏

議論のもう一つのアジェンダは、IoTビジネスを進めるにあたって、オープンイノベーションをどう活かすかということだった。

「そもそも、IoTはオープンイノベーションと親和性が高い。プロダクトだけでなく、サービスを考えていく場合、一つの会社だけで自己完結することは難しいのではないか」と鹿内博士が話題を振ると、岸田氏もそれに同意。

f:id:carraria:20160317170148j:plain▲株式会社リクルートキャリア IoTグループ  鹿内 学 博士

「テクノロジーの細分化が進み、開発スピードがますます速くなっている今、今後も自社開発だけですべての開発が進められるとは思えない。オープンイノベーションはこれからの必須条件であり、他社・他者と連携することが上手な企業や人が生き残る時代になる」と述べる。

f:id:carraria:20160317170155g:plain

稲垣氏は、「コクヨでも社外企業との協業は盛ん。ただ、対面で話してすぐにやりましょうとなるのはまれで、たいていは意見交換で終わってしまう。すぐに成果を出すことを期待するのではなく、私たちが複数企業の有志で進める『品モノラボ』のような長期的な取り組みも必要では。『品モノラボ』は会社帰りに品川に縁のあるメーカーやメイカー(モノづくりをする個人)の人たちが気軽に集まり、飲み物片手に一緒にものづくりについて語り合ったり、実際に作ったりしている。その他、共同での市場調査や、モック開発にあたって初期投資を分け合うということも、共同で行いやすい取り組みなのでは」と、企業間コラボレーションの新しいスタイルを紹介した。

f:id:carraria:20160317170141j:plain▲コクヨ株式会社 経営企画室 新規事業開発センター 稲垣敬子氏

その意味では、今回の「オフィス・ハック」プロジェクトも、新しいオープンイノベーションを促す機会になるのかもしれない。

電子マネーの残高確認、郵便・宅配の再配達をもっと便利に

イベントの後半は、創業前から創業直後のフェイズにある5つの企業・グループによる事業提案(ピッチコンテスト)。審査員にはパネラーのほか「Engadget日本版」編集長の鷹木創氏が加わり、新規性、実現性、事業性、表現、プロダクトの完成度などの観点から審査を行った。

f:id:carraria:20160317170149j:plain

いずれもオフィスや家庭における身近な課題を解決する提案だったが、同率1位で最優秀賞を獲得したのは、電子マネー用のパスケース開発を通して、電子マネーの残高確認ができないという問題を解決する「Coban」。そして、ポストに届いた郵便物をリアルタイムで利用者に通知するという、物流の新しいインフラ構築を提案した「PosTel」の2チームだった。

「半導体設計エンジニアとプロダクトデザイナーが、部品ではなく最終製品を作りたいとの思いで、今年2月に起業したばかり。経費精算はWebで行うという流れになっているが、そこにあえてIoTハードウェアで参入するのも面白いと思った。今後も未解決課題を技術とデザインの改良で解決していきたい」と語るのは、Cobanの前佛達也社長だ。

f:id:carraria:20160317170150j:plain

PosTelは郵便受けにカメラと通信機器を仕込み、宅配便などの不在票を読み取って、それをリアルタイムでスマートデバイスに伝えるというもの。荷物の再配達依頼も外出先から行うことができる。

f:id:carraria:20160317170152j:plain

「大手宅配業者が独自にメールサービスを提供しているが、事業者間の違いにとらわれないサービスを目指したい」というのは開発者の吉次洋毅氏だ。飲食店検索サイトでアプリ開発というのが本業だが、仕事の合間をみながらIoTビジネスを考える。

「ネットがいくら普及しても、すべてがWebで自己完結するわけではない。モノを介在させることで、より直感的なサービスを実現できるのがIoTの魅力であり、課題だと思う」と話した。

IoTビジネスは、信用の継続を核としたサービス運用が鍵になる

イベントの全体を総括しながら、リクルートキャリアの鹿内学博士は、今後のIoTビジネスの方向性をこう語っている。

f:id:carraria:20160317170142j:plain

「いまIoTが進んでいるのは、工場などの元々ロボットや機械、電子機器が大規模に導入されていて、それらが安定的に動く閉じられた空間での話。ただ、今後は私たちのもっと身近なところ、開かれた空間に浸透していくでしょう。また、IoTの裏側にはビッグデータがあり、IoTの普及は社会が本格的なデータ経済へと進むきっかけになる。個人的には、パーソナルデータが社会のなかで共有され、よりより社会システムが生まれる可能性に期待していますし、自らも実現していきたい。

ただ、個人情報を含むデータの取り扱いには注意が必要で、サービス提供者は利用者の信用を常に担保しなければならない。つまり、IoTビジネスの課題として、技術的課題やマーケット課題と同様に、セキュアなシステムをどう構築するか、それをどういう形で有料ビジネスに変えていくかが重要になります。利用シーンを考えずに、単にモノを作るだけ・売るだけではIoTビジネスはうまくいかない。信用の継続を核としたサービス運用が鍵になると思います。

今回はスタートアップからさまざまな提案があったが、企業の規模にかかわらず、オープンイノベーションによって事業を拡大させるチャンスが広がっています。様々な立場で協働しながら、面白いアイデアをサービス・プロダクトとして実現していきたいですね」

また、第一回のイベントを総括し、リクルートキャリアの宮崎雄一朗氏は最後にこう語ってくれた。

f:id:carraria:20160317170153j:plain

「今後“ケースキャン”のようなプロダクトを事業化しつつ、IoTビジネスにかかわる人たちのコミュニティづくりを進めたい。IoT事業を大規模・迅速に展開するためにはオープン・イノベーションが大切であり、そのためには仲間をつくることが欠かせないから。その意味で今回のイベントは盛況だった。学生から、大企業・ベンチャーを問わずさまざまなジャンルの人が集まってくれた。ピッチのプレゼンもそれぞれ面白かった。もう少し技術の話を突っ込みたかったが、それは次回以降の課題にしたい」

さまざまな課題を抱えながらも、たしかな一歩を歩み出したオフィスハックとIoT。それを実感するイベントだった。